ACL 教育支援プログラムを取り入れたのは、米国の監査論の教科書に、監査ツールとしてACLが紹介されていたのがきっかけである。ACL は、監査ツールとして外部監査人、内部監査人、公認不正検査士などの多くの実務家によって活用されており、大学でも ACL (アカデミック版)を利用した実践的な監査講義が行われている。
そのことは例えば、Ulric Gelinas et.al., “Norwood Office Supplies, Inc.: A Teaching Case to Integrate Computer-Assisted Auditing Techniques into the Auditing Course,” Issues in Accounting Education, Vol 16, No. 4 pp.603-636. などの学術雑誌に紹介されている。
そこで、東北大学の授業でも是非ACLを取り入れ、理論と実務を繋ぐ教材として活用すれば、抽象的な監査概念を具体的なイメージとして定着できると考えたのである。また、最近大手監査法人で ACL を導入し始めたと聞いている。そのため ACL を予め大学で習得しておけば、実社会に入った後も有用であると考えられる。
米国の企業などでは、実務で IT 監査(コンピュータ監査)を実施していない企業はないと言われている。そのような事情から海外での教育の現場においては、早くから ACL などの実務的なツールを使った IT 監査の教育が行われていると考えられる。
これからの日本の教育でも、監査論の基礎理論などの学習に加えて、その理論がどのように監査実務で用いられるかといった、いわば理論と実務を結ぶ架け橋となるような講義が求められなければならない。特に専門職大学院ではその必要性は高い。
最近、わが国では、会社法や、金融商品取引法の施行などをきっかけに内部統制あるいはコンプライアンスの重要性が強調されている。こうした体制を支えるのは、間違いなく IT 等の組織インフラである。それに伴って、IT 監査の必要性、重要性が各段に増大している。それはまた、教育の現場における IT 監査教育の充実化を示唆するものと言えよう。
米国に比べ、わが国では IT 監査に関する実践的な教育が遅れているが、新たな法令のもとでIT監査が実務の現場で浸透していくことになれば、大学における監査教育も大きな変革を迎えるはずである。折りしもACLが日本語化されたことは、その確実な追い風となっていくと言えそうである。